栃木県・那珂川町(なかがわまち)にある「那珂川町馬頭広重美術館」は、2000年3月に竣工した、浮世絵師の歌川広重の作品を所蔵・展示する美術館。
設計したのは、建築家の隈研吾さんで、数多く手掛けられている建築の中でも、とりわけ評価の高い建築がこの美術館です。
そんな名建築が竣工から約25年が経過し、使用されているルーバー(木材)の老朽化に伴い改修工事が行われ
2026年3月にリニューアルされて、新しく生まれ変わっています。

この建築の一番の特徴は、壁だけでなく、屋根まで覆われた30mm×60mmの細長い断面のルーバー。
歌川広重の浮世絵で見られる奥行き(レイヤー)を、このルーバーで表現され、「曖昧さ」と「繊細さ」が感じられる空間を作り出しています。

ルーバーは、アウターとインナーの2種類あり、それが、波板ガラスや金属板、トップライトと組み合わされることによって
さまざまな濃度をもつ空間を作り出しています。
外部から内部に移動する中で、ルーバーが異なる表情を作り出し「光や時間の移ろい」を感じられるのが特徴。
展示室に至るまでに、さまざまな空間を体感できるのが印象的でした。

馬頭広重美術館は、2025年6月〜2026年2月の期間で改修工事が行われ、老朽化していたルーバーが更新されています。
基本的には外装(アウター)のルーバーが取り替えられていて、屋根に設けられていたルーバーは、木目がプリントされたアルミ材に変わっています。

一方で壁面のルーバーは、当初から使用されている地元産の「八溝杉(やみぞすぎ)」に更新され、竣工時の質感がそのまま再現されています。
アルミのルーバーになると聞いて、質感や表情が変わってしまうかなと危惧していたのですが、いざ訪れてみると外観も違和感なく馴染んでいる印象でした。
インナールーバーは変わっておらず、経年変化がそのまま残っている様子も見ることができます。

ルーバーに目が行きがちですが、内装にも繊細で日本的な雰囲気を感じる要素があり
壁面には地元産の「烏山和紙(からすやまわし)」が使用され、温かみのある空間を作り出しています。

また、開口部に面したルーバーにも和紙が巻かれていて、ルーバーと和紙の織りなす柔らかい印象を感じることができます。

一部に設けられたトップライトからは、ルーバーを介した木漏れ日のような光が、和紙に陰影を作り
まるで、安藤(歌川)広重の名作「大はしあたけの夕立」にある雨のような、美しい表情を創出しています。
ルーバーを介した光に加え、和紙による間仕切り照明から漏れ出す光など
和紙とルーバーが織りなす柔らかい雰囲気が、とても心地の良い空間を作り出していました。

エントランスホールや通路とは対照的に、展示室は黒を基調とした内装になっていて、
地元産の芦野石(黒目)が作り出す、落ち着いた雰囲気の展示空間になっています。


また、隈研吾さんによる、芦野石が使われたディスプレイや、
ルーバーによるベンチも見どころで、建築と調和したデザインを細部にまで見ることができます。
展示室は落ち着いた雰囲気で、安藤(歌川)広重の作品に集中できる展示空間となっています。
什器には、石やルーバーといったデザインが用いられることで、建築とインテリアが調和した様子を見ることができました。

世界的にも著名な建築家・隈研吾さんの代表作とも言われる「馬頭広重美術館」
屋根と壁を覆う「ルーバー」が、街の風景に溶け込み、繊細で奥行きのある空間を作り出しています。

改修時に更新された八溝杉のルーバーは「風景のかけら」として、ミュージアムショップで購入することができます。
隈研吾さんの建築理念である「負ける建築」を体感できる美術館。
約9ヶ月の改修期間を経て、美しく生まれ変わった建築をぜひ一度ご覧ください。
「風景のかけら」は限定500個なので、隈研吾ラバーはお早めに。(現金のみで買えなかったので、欲しい方はご注意を;)
