東京・上野の東京国立博物館の敷地内にある「法隆寺宝物館」
建築家の谷口吉生さんによる設計で、ミニマルなデザインが印象的なモダニズム建築です。
谷口さんはこの建築で、「崇高な収蔵物に対する畏敬の念」と「自然の尊重」から、静寂や秩序、品格のある環境を目指したとされています。
今回は、そんな凛とした佇まいを持つ建築を紹介します。

法隆寺宝物館は、東京国立博物館の敷地内にある、法隆寺献納宝物を所蔵・展示する施設で
上野公園に隣接する場所ながら、公園の喧騒をシャットアウトしたかのような静寂を持つ建築になっています。
水盤の奥に佇む、四角いシンプルな外観が見るものの背筋を伸ばします。
上野公園が近いことを全く感じさせない静けさを持つ建築。
水盤を巡るように通路が設けられていて、来た人の気持ちを高揚させる仕掛けがされています。

設計者はMoMA(ニューヨーク近代美術館)の設計も手掛けた、世界的にも高い評価を受ける谷口吉生さん。
谷口吉生さんの建築は、直線(水平や垂直)や幾何学、スケールの共存といった特徴が見られ、モダニズム建築の要素が追求されています。
この建築でも、そういった特徴が随所に見られ、ヒューマンスケールの入り口もその一つ。
ファサードの大きさに比較して、とても小さい入口は、谷口吉生さんの建築でしばしば見られる特徴です。
これは、展示作品に触れる前に身体的な感覚に戻ることで、作品に向かう準備をする仕掛けとされています。

エントランスホールは、低い入口とは対照的な高さのある空間になっています。
水盤に面した開口部や、天窓から差し込む光が、内部を明るく開放感を作り出しています。

反対側の壁面はドイツ産のライムストーンで構成され、スチールやアルミの冊子とは対照的な柔らかい印象になっています。
置かれているチェアは、マリオ・ベリーニの名作チェアのキャブチェアで、朱色のカラーがアクセントになっています。
谷口吉生さんの建築は、日本的な空間も特徴とされていて、格子状のサッシが障子のような雰囲気を作り出しています。
サッシの下部が空いているのは、雪見障子と言われる日本家屋のデザイン要素を取り入れたもの。

展示空間は、エントランスホールとは異なる品格のある空間になっていて、
特に金銅仏(こんどうぶつ)が展示された空間は圧巻で、日本の仏教美術を代表する収蔵品が、美しい空間を作り出しています。

また、展示室を繋ぐ吹き抜け階段には、国宝の灌頂幡(かんじょうばん)が展示されています。
貴重な収蔵品に触れながら、建築を巡る体験が創出されています。
展示室に入ると別の世界のようで、薄い暗がりの中、金色に輝くような展示室がとても印象的でした。
国宝をはじめとした貴重な文化財を、谷口吉生さんの建築で体感できる施設になっています。

世界的にも高い評価を受ける谷口吉生さんによる宝物館。
水平や垂直の方向性や、日本の美意識を感じることのできる、日本のモダニズム建築を代表する建築です。
上野公園に隣接した場所にありますが、公園の喧騒を感じさせない静寂と秩序をもつ施設になっています。
好きな建築家としていつも挙げさせていただく、谷口吉生さん。
日本的な美意識や、シンプルで洗練されたモダニズムの建築がとても美しく、見る人を魅了させてくれます。
訪問した際の建築VlogをYouTubeで公開予定です。よければご覧ください。
