東京・小金井にある 江戸東京たてもの園。
その敷地内に移築保存されているのが、建築家・前川國男の自邸である。
この住宅は1942年に竣工した。
現在の展示解説では、“戦時下の資材統制の中で建てられた木造住宅” と紹介されている。
(参照:https://www.tatemonoen.jp/guide/registered/miya/)
日本の近代建築を牽引した建築家が、自らの住まいで何を選んだのか。
そこに、思想の核心がある。
ル・コルビュジエの弟子が、なぜ木造なのか
前川國男は、若き日にパリで ル・コルビュジエの事務所に勤務していた。
(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/前川國男)
鉄筋コンクリートによる合理主義建築を学んだ人物である。
しかし自邸は木造。
背景には戦時下の資材統制がある。
鉄やセメントは軍需優先となり、住宅建築では使用が制限されていた。
だが、この木造は単なる妥協だろうか。
むしろ、近代合理主義を日本の木造構造に翻訳する試みだったのではないか。(※解釈)
▶︎ みならいメモ
「モダニズムの建築家の家」と聞いて、コンクリート住宅を想像していた。
目の前に現れたのは、静かな木の家。
でも、どこか緊張感がある。
明快な平面構成
展示解説によると、居間を中心とした明快な構成が特徴である。
(参照:江戸東京たてもの園 展示資料)
伝統的な続き間の曖昧なつながりではなく、
機能ごとに整理された平面。
しかし、畳や引き戸といった日本的要素は残されている。
西洋近代建築をそのまま持ち込むのではなく、
日本の生活様式に合わせて再構成しているように見える。(※解釈)
▶︎ みならいメモ
中に立つと、驚くほど落ち着く。
合理的なのに、冷たくない。
生活がちゃんと想像できる空間だった。
水平ラインという設計言語
外観で印象的なのは、低く抑えられた屋根と深い軒。
この水平性は、前川の後年の作品にも共通している。
例えば、
(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/東京文化会館)
や、
(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/神奈川県立音楽堂)
スケールは異なるが、横へ広がる意識は一貫している。
この自邸は、その設計語彙の原型と読むことができる。(※解釈)
▶︎ みならいメモ
少し距離を取って見ると、屋根のラインがすっと伸びている。
主張しないのに、美しい。
素材への態度
木材は隠されず、構造は素直に表れている。
過度な装飾はない。
これは合理主義というより、素材に対する誠実さのように感じられる。(※解釈)
強い造形ではなく、
構造そのものが空間をつくる。
▶︎ みならいメモ
梁を見上げたとき、「ちゃんと建っている」という安心感があった。
構造が見えるって、こんなに信頼につながるのか。
住宅だからこそ見える思想
前川國男といえば、公共建築のイメージが強い。
しかし、この小さな住宅にこそ、思想の原点がある。
- 制約の中で合理を探す姿勢
- 日本文化との折衷
- 水平性という設計言語
それらはのちの代表作へとつながっていく。
自邸は実験であり、宣言でもあったのではないか。(※解釈)
まとめ
前川國男自邸は、
近代合理主義を
日本の木造住宅へ翻訳した試みである。
強い表現はない。
だが、思想は確かにある。
派手な公共建築よりも、
この静かな住宅の方が、建築家の核心に近いのかもしれない。(※解釈)

