東京・荻窪にある、国の指定史跡である「荻外荘(てきがいそう)」の復原整備が完了し、2024年12月に荻外荘公園としてオープン。
荻外荘は元内閣総理大臣の近衞文麿(このえふみまろ)氏の邸宅として使用された歴史ある施設です。
そんな荻外荘を設計したのは、築地本願寺を始めとした、大正〜昭和を代表する建築を数多く手がけた建築家・伊東忠太(いとうちゅうた)氏。
歴史ある文化遺産が、竹中工務店の手によって復元され、政治の歴史を知れるほか、伊東忠太氏の住宅に対する考え方を知ることのできる貴重な建築となっています。

日本の歴史が大きく動いた「荻窪会談」が行われたとされる、客間が再現された空間。
団扇(うちわ)や時計の時刻など、会談が行われたとされる日時の状況が忠実に復原されています。

また、近衞文麿氏が自決(服毒)された書斎の様子も復原され
政治の歩んできた歴史を感じることのできる空間が再現されています。
書斎は改修後の状態が復元されているため、伊東忠太氏の設計ではありませんが、歴史を感じることのできる場所となっています。
伊東忠太氏が設計された諸室で復元されているのは、客間に加え、以後紹介する食堂や応接室など。

伊東忠太氏の住宅への理念として、「諸室へのアクセス性」や「通風・採光」、「家主の特徴の反映」といった点があり、
荻外荘では、諸室を巡るように配置された「広縁」が各室を繋ぎ、風を通し、光を取り込む空間構成になっています。

また、客間や食堂といった、来客用の諸室が広く計画されているのは、竣工当時の家主であった、入澤達吉氏の社交性が反映されています。
部屋ごとの性格も内装に反映されているのが特徴で、装飾性の高い壁紙など、客間や食堂は絢爛豪華なデザインとなっています。
住宅の理想系を目指した、伊東忠太さんの住宅観を知ることができる貴重な建築。
差し込む光が心地よく、現代の生活に置き換えても、快適な空間設計がされている住宅だなと感じました。

応接室は、中国的なデザインが見られ、天井には龍の天井画、床には龍の敷瓦が施されています。
また、建具にも意匠性が見られるのも伊東忠太氏特有で、花狭間(はなざま)と言われる装飾が邸内各所のガラス戸に施されています。

家具にも独創的な装飾が施され、梅とカササギの彫刻など、細部にまでこだわられた様子を見ることができます。
伊東忠太氏の建築といえば、築地本願寺を始めとした和洋折衷の建築ですが、荻外荘においても東洋や中国的な要素を多く見ることができます。
さまざまな様式が喧嘩することなく調和しているのは、伊東忠太氏の建築的魅力だなと感じました。

内部の東洋的なデザインとは異なり、外観は和風のデザインとなっていて、
雁行(がんこう)する立面や、それぞれ異なる建具のデザインが連続しているなど、視覚的に楽しいファサードデザインをしています。

建物南側にある荻外荘公園から見ても、建具のデザインがとても印象的な外観をしています。
伊東忠太氏は、建物の予算とは別に費用を取っておくなど、建具のデザインへのこだわりも特徴の一つとなっています。
内部で感じた建具のデザインが、外観にも現れていて、とても魅力的な建築だなと外から見た際に改めて感じました。
日本の伝統的な建築要素である、裳階(もこし)や欄干(らんかん)なども目を凝らすと見ることができます。

日本を代表する建築家・伊東忠太氏が設計した、政治と建築の歴史を感じることのできる数少ない住宅建築。
伊東忠太氏の住宅に対する考え方を知ることのできる、とても貴重な施設になっています。
東洋や中国的な要素と、日本の和の空間が見事に調和した建築になっているほか、さまざまなデザインが施された建具のデザインも必見です。
日本の建築の歴史だけでなく、政治の歴史も感じられる、とても興味深い施設でした。
隈研吾さんが設計した展示棟も隣接しているので、建築に興味がある方は、ぜひ併せて訪れてみてください。
早朝に行くと、差し込む光が美しい広縁の空間を見ることができます。

