日本画家・山口蓬春さんの自邸兼アトリエがミュージアムとなった「山口蓬春記念館」
昭和初期に建てられた建物が、建築家の吉田五十八さんによる増改築と、大江匡(ただす)さんによる改築が行われ、複数回の増改築を経ているのが特徴です。
画室や茶の間では、吉田五十八さんによる設計が、外構や展示室では大江匡さんによる設計を見ることができます。

文化勲章も受賞されている、日本画家・山口蓬春さんの記念館として、1991年に開館したミュージアム。
この記念館では、山口さんの作品が見られるほか、画材や家具も含めて復元された画室も見れるのが特徴です。

置かれている家具も吉田五十八さんによるデザインで、このテーブルと椅子はスチールの支柱を竹で被覆しているのが特徴。
ハイライトはこの画室で、高い天井と大きな開口部が印象的な空間になっています。
また、左手の壁面が隠し戸棚になっていたり、4枚の引き込み障子があったりと見えない部分にも驚きがありました。

この建築では、吉田五十八さんの設計による、2度の増築が行われています。
画室、茶の間、内玄関などが増築されていて、画室へ向かう廊下部分から吉田五十八さんによる設計になっています。

2階の座敷(旧画室)は既存のままですが、廊下に面する窓の桟の高さが改築されています。
面積の半分ほど増築されていますが、既存の空間との連続性もあり違和感を感じませんでした。
2階の桟の高さは、座っても海が見える高さになっているそう。

茶の間や内玄関には、吉田五十八さんの十八番である勾配天井と埋込照明が見れます。
また、障子の間に柱がなく、天井のラインによって、空間の連続性を感じることができます。

内玄関にも同様の天井デザインを見ることができます。
開口部に向かって伸びる天井のラインが印象的で、自然と外へ視線が誘導されているように感じました。
吉田さんの建築を見に行くと、やはり天井に目がいってしまう。

大江匡さんの改築では、スチールのフレームが印象的な空間を作り出していて
内部に展示室を設けるスペースしか確保できなかったことから、外部に休憩スペースとしてテラスが確保されています。

また、四季折々の風景が見れる庭にも、鉄の構造体が計画されています。
和風の建築とは対照的な素材を用いることで、深度のある空間を作り出しています。
大江匡さんは、この設計手法を、時と文化の「かさね・あわせ」と言われています。
スチールのフレームによって、現代的な印象の空間が作り出されていました。

日本画家・山口蓬春さんの自邸兼アトリエがミュージアムとなった「山口蓬春記念館」
吉田五十八さんと大江匡さんによる増改築が行われ、伝統的な和と現代的な素材の融合が行われた建築になっています。
建物に面する庭園もとても美しく、四季折々の風景が見られます。
吉田五十八さんによる、無駄のない洗練された空間が印象的な建築でした。
庭園もとても綺麗なので、新緑や紅葉の時期に行くのがいいかも。
訪問した際の建築VlogをYouTubeで公開予定です。よければご覧ください。

