東京・天王洲アイルにあるWHAT MUSEUMで開催されている展覧会「波板と珊瑚礁 – 建築を遠くに投げる八の実践」
WHAT MUSEUMは、寺田倉庫が運営する現代アートと建築のミュージアムです。併設する建築倉庫では模型を通じて建築文化を発信しており、
今回の展示では、国内外で活躍されている建築家の「思考」と「哲学」を、模型を通して知ることのできる内容になっています。
また展示されている作品は、すべて今回の展覧会のために制作されたオリジナルのもので、非常に貴重なものになっています。
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展覧会のタイトルになっている「波板」と「珊瑚礁」
波板は、建築資材として「一般的に流通されている人工物」を、珊瑚礁は、自然界に存在する「長い時間をかけて生成される自然物」を表していて、
性質や生成される時間などが異なる、2つの存在が共存する状態を示しています。
目の前の課題への即応が求められる社会のなかで
時間や場所を超えた「長期的な視点で建築を構想する重要性」をテーマにした、展覧会名称になっています。

今回の展覧会は、8組の建築家によるグループ展で、1階と2階を巡るような構成になっています。
それぞれ異なる「思想」や「哲学」を持つ建築家の展示を、一度に見ることができる展覧会。
展示ごとにどんな物語があるのか、建築家ごとにどんな思考の違いがあるのか、
行ったり来たりしながら見ることで、建築の奥深さを知ることができる展示になっていました。
01:RUI Architects「Prop」

1つ目の展示は、RUI Architectsさんの作品。
RUI Architectsさんは、建築設計のほか、プロダクトや素材開発、建物設計なども手掛けられている建築設計事務所で、
今回の展示では、WHAT MUSEUMのある天王洲から大崎周辺にある風景に着目した模型による作品が制作されています。


高架橋の下にある柱の存在や、建物の向きなど、日常の風景の中にある「不思議な場所」に着目した模型が展示されていて、
日々の建築設計でも同様のアプローチで取り組んでいる、RUI Architectsさんならではの展示を見ることができます。
都市の風景が模型になった作品で、そこにあるであろう物語も併せて展示されています。
建築家の見ている世界を知ることができる、非常に興味深い展示作品になっていました。
02:DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION(jetway)」

2つ目の展示は、DOMINO ARCHITECTSさんの作品。
DOMINO ARCHITECTSさんは、建築だけでなく、インテリアやプロダクトなど、空間に関する領域を横断的に手掛けている建築設計事務所で、
今回の展示では、全周が約12mにもおよぶ圧巻の建築模型が展示されています。


この大型模型は、以前から思い描いていたという、空港にある「搭乗橋」を連結してできた空中回廊で、
現在あるものを再構築することの可能性を表現したものになっています。
また、周囲に展示されている写真は、写真家の小川真輝さんが撮影されたもので、模型とは異なる「実写」のような空中回廊も見ることができます。
展示されている大型模型は、3Dプリンターや既存のパーツを使わず、すべて一から一人で制作され、2ヶ月の期間をかけて制作されたそう。
将来的には作品のシリーズ化や、ドイツの空港公園での実現も視野に入れられているそうで、今後の展開が楽しみな展示になっています。
03:GROUP「都市と眠り」

3つ目の展示は、GROUPさんの作品。
GROUPさんは、都市で起きていることを観察し、あらためて考える方法として、建築を用いるコレクティブです。
今回の展示では、「都市における眠り」に着目した内容になっていて、眠りから「生活や社会のあり方」を見つめ直しています。


映像、3Dプリントによる模型、LEDディスプレイによる図面からなる展示は、都市の中で「人が眠ることができる場所」に着目した内容になっていて、
都市が何を受け入れ、何を排除しているのかをリサーチし、都市のルールや働き方、管理の仕組みについて考えさせる作品になっています。
椅子とテーブルが置かれた1/1模型は、都市の中で「うっかり眠ってしまう場所」が再現されているなど、面白い発見がある作品になっています。
GROUPさんが考える都市(渋谷)のあり方も見れる興味深い展示内容でした。
04:Office Yuasa「闇、遅れた微光」

4つ目は、Office Yuasaさんの作品。
Office Yuasaさんは、日常にある「違和感」を大切にしている建築スタジオで、
今回の展示では、蓄光塗料を塗ったテーブルと椅子、背後の壁からなる空間展示で、
人が関わることで残る「気配」や「痕跡」によって、変化していく空間を体感することができる作品になっています。
実際に座ったり、灯りを点けたりすることができる、体験型の展示になっていて、
自分の影が残る様子など、その場に溜まっていく記憶のようなものが感じられる展示になっていました。
05:畠山鉄生+吉野太基+アーキペラゴアーキテクツスタジオ「What is ○ △ □?」

5つ目の展示は、建築家の畠山鉄生さんと吉野太基さんが主宰する、アーキペラゴアーキテクツスタジオさんによる作品。
アーキペラゴアーキテクツスタジオさんは、形や構成の正確さを大事にしながらも、そこから「こぼれ落ちる感覚」や「違和感」に目を向けている設計事務所です。
今回の展示は、日常にありふれた「幾何学形」である○ △ □ についての可能性や、形に対して私たちが抱く先入観を探る作品になっています。


それぞれの幾何学形は、アーキペラゴアーキテクツスタジオさんが設計された、実際の建築で用いられたもので
その建築と幾何学形に対して、異なる領域の作家さんが、建築のコンセプトを再解釈した作品を制作されています。
展示空間の領域を飛び出す円や、宙に浮く三角、青銅で作られた四角といった、3つの異なる作品で構成された展示。
建築倉庫では、元となった実際の建築の模型も展示されているので、併せて見るとより理解が深まる作品になっています。
06:ガラージュ「ほどかれた結界」

6つ目は、ガラージュさんの作品。
ガラージュさんは、「建築・映像・演劇」の異なる領域を専門とするメンバーで構成され、人と環境が関わるなかで生まれる「流動的な状況」を建築として扱っている建築集団です。
今回の展示では、建物を建てる際の「地鎮祭」などで立てられる結界から着想した作品が制作されています。


展示空間には棒と線が張り巡らされた「結界」のような場所が作られていて、そこに人が関わることで変化する空間が表現されています。
制作に使用された道具も残されていて、その状態も作品の一部になっています。
棒や線は、触れたり動かすことができるようになっていて、来場者の行為がそのまま展示に反映される作品となっています。
ガラージュさんが考える、人と環境が関わることによって「変化する状況」が体感できる展示になっていました。
07:ALTEMY「往環する身体」

7つ目の作品は、ALTEMYさんの展示。
ALTEMYさんは、建築だけでなく、ランドスケープやインスタレーションなど、分野を問わず、建築として設計している、建築家の津川恵理さんが代表を務める建築デザインスタジオです。
今回の展示では、都市の群像と展覧会に来場した鑑賞者が、互いに交わりながら作り出す作品が制作されています。
リアルタイムの渋谷の人たちと、展覧会会場にいる人たちが、映像として投影される展示作品で、
自分と自分以外の他者が、互いに関わり合うことを建築として考える作品になっていました。
08:平野利樹「東京箱庭計画」

8つ目の作品は、平野利樹さんの展示。
平野利樹さんは、デジタル技術が建築にもたらす、新しい表現や感覚を探究している建築家です。
今回の展示では、個人の深層心理が生み出す建築を、「箱庭療法」と「生成AI」を活用して表現された作品が制作されています。


展示作品のうち「わたしの箱庭」では、平野利樹さんの箱庭が表現されているほか、
その隣には来場者が体験できる「あなたの箱庭」があり、来場した人たちが箱庭を作り、そこから生成される都市の姿を一緒に見ることができます。
今後さらに普及するであろう生成AIの可能性を知ることができる展示作品。
生成AIという少し距離の感じるデジタル技術が、身近に感じられるような、カラフルでユニークな展示作品になっていました。

WHAT MUSEUMで開催中の展覧会「波板と珊瑚礁 – 建築を遠くに投げる八の実践」
新進気鋭の建築家8組による、完全オリジナルの作品を見ることができる展覧会です。
それぞれ異なるアプローチから「建築とは何か」を考えてきた、建築家たちの「思考」や「哲学」を知り、体感できる貴重な内容になっています。
圧巻の「大型模型」や「映像展示」など、空間的・身体的に体感できる建築の展覧会。
現在活躍中の建築家の思考を知れるまたとない機会なので、建築に興味のある方はぜひ訪れてみてください。
会期は2026年4月21日(火)から9月13日(日)まで。
詳細は公式サイトをご覧ください。

